おっさん、やせてみる。

柴崎在住のおっさん、一念発起してやせてみる記録。

大前提の話。

私はずっと、身長179cmを公称してきた。


ただ、午前中の一番いいタイミングで測って限界で179とかで、だいたいは177~8くらいに見られるだろう、と思ってきた。


先日、仕事で付き合いのある人に(非常に愉快で誠実な信頼できる男なのだが、先輩上司構わず割とダイレクトに相手の心に踏み込むようなことをずけずけ言うので、一部の物わかりのいい上司からは大変にかわいがられている)、


「え、そんなあるんですか。173、4くらいに見えてました」


と言われ、裸の王様が服をはがされたような気分になった。


実のところ、「自分は179cm」というのは、遠い日の記憶でしかない。
最後の身体測定って、高校の時なんじゃないか?
それも、診断の結果というよりは、友達と張り合ってそう主張していたものがいつのまにか自分自身にすり込まれてしまって、勝手に自分の中でそういうことにしてしまっていたという可能性は、ある!
すごく不安な、足元の抜けたような気分。


これは全く大人げない、チンケな男心というヤツなんだが、自分がちょっとだけ人より長身であることは、ひそかな優越感のひとつであった。
特に、取り立てて他に美点を挙げることもできない外見の私である。
その場はそういった衝撃を表に出さずにやり過ごしたが、正直、だいぶ焦った。
しかも、それを、今まで私が身長を聞かれて179ですよと答えてきた全ての相手達が、実は胸の内で同じように思いながら生暖かく私を見逃してくれていたのだろうかなどと思えば思うほど、もう恥ずかしくていたたまれなくなった。


そこで、夜、自室でこっそり測ってみた。


ところが手元には30cm定規、しかも両端に余白があるタイプのものしかない。
精密な測定は望むべくもないが、なんだかもう切なくてそうせざるを得なかった。
柱に寄りかかり、印をつけ、定規をぺたん、ぺたん、と這わせていく。


結果、174cmと出た。


へこんだ。
虚栄心を折られた屈辱と、そんな自分自身への恥辱にまみれて、私はその夜なかなか寝付けなった。


そうか、オレは174なのか、174の男として生きていこう。


翌朝には、どうにかそういう風にふっきり、というか開き直りができて、174の私はいつものように出勤した。


いやまったく。
いいトシこいたオジンが、身長測ってへこんでるとか、滑稽すぎて笑えんわな。
そっと見なかったことにするレベルだわ。


ところで、174の私にはあるひとつの懸念が生じた。


体脂肪率、違ってるんじゃないか?


私のヘルスメーターは、リサイクルショップで間に合わせに買った10年も前のもので、体重はまあ正確だろうが、体脂肪率は測るたびに数字が変わるいかがわしいポンコツである。それでもまあ、だいたい20代後半であることはわかるので、さしあたりその目安がつかめていればそれでよし、としてきた。


しかし、それは179cmの私の数値である。
174cmになった私の体脂肪率はいかばかりか。


気になって、帰宅後、ヘルスメーターの身長設定を174に変えて測ってみた。



FAT 46.5%



いやいや。
体の半分が脂肪て。



パンいちになって、足の裏の埃を払って、もう一度。



FAT 42.8%



ホントに?
世の中そういうものなの?


この期に及んで、自分がデブじゃないなんてわめくつもりはないけど、オレってホントにそんなんなの?



疑惑が生まれた。
しかし、その疑惑は光明でもあった。



翌日、私はオフィスの隅っこで埃をかぶっている工具箱から3mのメジャーを取り出し、休憩時間にオリグチくんの協力を頼んで(他にトモダチいないのかな僕)、再度、客観的第三者を交えた測定に及んだ。



179cmだった。



はい、今日はここまで。みんなありがとう。