おっさん、やせてみる。

柴崎在住のおっさん、一念発起してやせてみる記録。

ついにこの日が……

「絲山さん、やせましたよね?」


ついに……


ついに、言われた。


毎朝の体重測定による数値的満足ではなく、自分で腹を揉んでみた手触りとかの主観的自己満足ではなく、客観的第三者からの評価を得た。


職場の若い奴で、まあ、私がここのところわりと熱心にトレーニングしていることは知っているはずだから、普通に考えれば、まあ、七割がたは社交辞令として受け止めるべきところではある。


しかし。


そいつは、普段、そういうことが言える人間ではない。
気が利かないというか……


良く言えば、ピュアな男だ。


だからこそ、今日に限っては素直にうれしかったよ、ありがとう。



それで私も普段になく饒舌になってしまって、しばらく話し込んだのだけれど、実は彼も熱心にトレーニングをしていて、しかし、彼の悩みというのは、


「どうしてもやせてしまうから太りたい」


という……どつきまわしてやろうかというような、私とは正反対のものだった。


それもね。


しばしばいる、いかにも貧弱貧相な男が、逞しくなりたいという話なら、まあ分かるよ。


彼は結構な筋肉質で、腕は私よりふたまわり筋肉がついているし、一度、なんかの着替えの時にちらっとみたけど、「おっ」と思うような筋肉質の体だったよ。すらっとして顔もイケている。若く朗らかで天然である。


それ以上、何を望むことがあると言うのか。


基本的に筋肉だから、そりゃあ、こまめに栄養補給を続けないと減っていくよ。
脂肪がつきにくいのかな?
今日も昼にバターパン一袋とカップ焼きそば食ってたし……


「気を抜くと痩せるから、太り方を知りたい」
「肥満と言うものに憧れている」
「一度、100kgとかになってみたい」(ちなみに私は昨年、その数歩手前までいった)


私は脳が卑屈にできているせいで、ともすれば嫌味か皮肉にしか聞こえないセリフだが、なにしろ彼はピュアな天然さん、ナチュラルボーンイノセントである。
本当に本気で言っているのである。


しょうがないから、私も親切心で、ありったけの肥満化方法を伝授してやったよ。
まずは、唐揚げと春巻きとシュウマイでビールだ!